引退を表明した横綱・日馬富士は、自ら身を引いたことで相撲協会からの多額の退職金(養老金、勤続加算金)を手にします。
今後、警察や協会の危機管理委員会の調査が進んで除名や解雇となった場合は、支給見送りや減額の可能性もありました。調査結果が出る前の引退表明には、そんな背景もあると言われています。
元祖問題横綱の朝青龍もそうでした。2010年1月に一般人に対する暴行事件を起こすと、約1カ月後に突然、引退届を提出しました。同日に出されるはずだった横綱審議委員会からの「引退勧告書」の先を越す形で、涙の引退会見を行いました。
その結果、元横綱・朝青龍は協会規定の満額となる退職金3685万円を手にしただけでなく、「横綱・大関にのみ支払われる特別功労金もせしめた。金額は1億2000万円。これは、過去最高の元横綱貴乃花に支払われた1億3000万円に次ぐ額で、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が率いた当時の相撲協会は批判にさらされました。これに、引退後に支払われる懸賞金の協会積立金と合わせて、朝青龍が手にしたのは3億4000万円超。大甘裁定といわれましたが、朝青龍の前例があるだけに、日馬富士にもすべて合わせて2億円前後のカネが支払われることになるはずです」とは、ベテラン相撲記者は言います。
そんな横綱・日馬富士ですが、退職金はいくらになるのでしょうか?
日馬富士プロフィール
目次
- 四股名:安馬 公平→日馬富士 公平
- 本名:ダワーニャミーン・ビャンバドルジ
- 生年月日:1984年4月14日(33歳)
- 出身:モンゴル・ゴビアルタイ
- 身長:186cm
- 所属部屋:安治川部屋/伊勢ヶ濱部屋
- 得意技:突っ張り、右四つ、寄り
日馬富士略歴
警察官でありブフ(モンゴル相撲)の国家ザーン(大相撲での関脇に相当)だった父親の元、3人兄弟の末っ子として育つ。幼少期から兄と相撲を取ることが遊びで、兄に負けても悔しがる負けん気の強い子供であった。ウランバートルの柔道クラブにも通っており、後の朝青龍や朝青龍、時天空らと稽古した。一方、現在も趣味の絵画では、この頃、机に座って何時間も黙って描き続けていた、という集中力のある一面もあり、小学校時代には絵のコンクールで入賞した経験もある。
旭鷲山の活躍をテレビで見て、2000年7月に、旭鷲山の部屋の先輩にあたる安治川親方がモンゴルで開いた相撲大会に出場。全体で100人近くいた日本の大相撲志願者の中で、彼に成長欲を感じた親方がスカウト。父親が「うちの子は泣いても帰らないから大丈夫です」と親方に言い、これを聴いた親方が即決した。
インタビューの際の口癖は「お客さんを喜ばせる激しい相撲をとりたい」。好きな言葉は「全身全霊」「なんでやねん」。締め込みの色は、2017年現在は黒。
2014年4月より法政大学大学院政策創造研究科に入学し、史上初の大学院生横綱となった。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%A6%AC%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E5%85%AC%E5%B9%B3
大相撲の退職金制度
今回、大相撲における退職金の制度についてご紹介します。
十両以上の力士には、現役引退時に退職金に相当する養老金および勤続加算金(いわゆる一般功労金)が支給されます。資格者は幕内連続20場所以上または幕内通算25場所以上の者で、それに満たない者は非資格者となります。ただし、現役中に協会から除名処分を受けた者には支給されません。解雇処分された者については理事会の付帯決議で一部または全部の支給が見送られることがあります。
養老金
横綱 | 大関 | 三役 | 平幕 | 十両 | |
---|---|---|---|---|---|
資格者 | 15,000,000 | 10,000,000 | 7,630,000 | 7,630,000 | 4,750,000 |
非資格者 | — | — | 7,630,000 | 4,750,000+(勤続場所数-1)×120,000 | 1,150,000+(勤続場所数-1)×150,000 |
(2006年1月現在、単位:円)
勤続加算金
番付の各地位における勤続場所数を乗じて、それぞれを加算した金額が勤続加算金の合計となる。下表の( )内の数字は、非資格者。
横綱 | 大関 | 三役 | 平幕 | 十両 | |
---|---|---|---|---|---|
横綱 | 500,000 | 400,000 | 250,000 | 200,000 | 150,000 |
大関 | — | 400,000 | 250,000 | 200,000 | 150,000 |
三役 | — | — | 250,000 | 200,000 (150,000) | 150,000 |
平幕 | — | — | — | 200,000 (150,000) | 150,000 |
十両 | — | — | — | — | 150,000 |
(2006年1月現在、単位:円)
特別功労金
横綱・大関には、現役引退時に理事会の決議により養老金および勤続加算金とは別に特別功労金が支給されます。
かつては、支給額は公表されていたが、2005年4月1日から個人情報保護法が施行されたことにより、同年5月場所から支給額は非公表となりました。この措置に対しては公益法人たる財団法人日本相撲協会の方針として不適切であるとの意見もあります。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%9B%B8%E6%92%B2
日馬富士の引退
暴力問題で動向が注目されていた横綱の日馬富士が29日、現役を引退しました。日本相撲協会に引退届を提出、受理されました。同日に福岡・太宰府市内で行われた引退会見が、平幕貴ノ岩への暴力を認めて謝罪した14日以来、半月ぶりの肉声となりました。暴力についても先輩として礼儀、礼節を指導する中での行為だったと初めて胸中を明かし、再び謝罪しました。目に涙をためて「横綱としての責任」と繰り返しました。恨み節はなく「感謝、感謝、感謝」と土俵に別れを告げました。
秋巡業中の10月25日夜、鳥取市内の酒席での貴ノ岩への暴力が自らを引退へ追い込みました。何発殴ったかなど、暴力の詳細は鳥取県警と相撲協会の危機管理委員会が現在も調査中です。近く県警の再聴取を受ける見通しのためすべては語りませんでしたが、同じモンゴル出身の貴ノ岩を弟弟子のように思っていた胸中を明かしました。
日馬富士は、
弟弟子が礼儀と礼節がなっていなかった時にそれを正し、直して教えてあげるのが先輩の義務だと思っています。弟弟子を思って叱ったことが彼を傷つけ、大変世間を騒がせて迷惑をかけることになってしまいました。行き過ぎたことになりました。彼のためになる、僕が正しいことをしているという思いが強すぎると行き過ぎるんだなと思いました。本当に…それだけです。
と、処分を受ける前に自ら身を引く覚悟を決めました。
伊勢ケ浜親方は
会見には、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も同席しました。
会見場に到着した伊勢ケ浜親方は最初に
「本日、横綱日馬富士が引退届けを提出しました。日馬富士が今回の問題の責任を感じて引退したいということは、本人から早くから言われておりましたが、ファンのみなさんに相撲を楽しんでいただく場所の間、控えさせていただきました。私は日馬富士、横綱を16歳の少年の頃から見てきましたが、稽古に精進したのみならず社会貢献や、絵が上手で、本当に珍しいタイプのお相撲さんでした。酒癖悪いとか乱暴するとか、私自身見たことも聞いたかことありませんでした。なぜこのようなことになったのか、ただ不思議というか残念でなりません。これまで支えてくれたファンの皆様、相撲協会の皆様に心からお礼とおわびを申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」
と涙を流しながらあいさつをしました。ただ、涙をぬぐったり鼻水をすすったりするなど、悲しみをこらえきれない伊勢ケ濱親方でしたが、記者の質問が進むにつれ、不快感をあらわにする場面もありました。
日馬富士の退職金はいくら
まずは退職金は実績により変動しますので、日馬富士の実績をおさらいします。
日馬富士の実績
- 横綱成績:285勝104敗61休
- 通算勝利数:827勝(歴代11位)
- 幕内勝利数:712勝(歴代6位)
- 優勝回数:9回(歴代15位)
- 全勝優勝:3回(歴代10位)
- 幕内在位:77場所
となっています。こうして見ると、歴代横綱の中で見ても強豪と呼んで差し支えない数値が並びました。同時代の力士としては小柄なのもあり、懸念された時期もありましたが、実に立派なものです。空前絶後の大横綱である白鵬と同時代のためか、日馬富士は過小評価されている感がなくはありません。しかし、これまで積み重なった数字を見る限り、十分に名横綱と称して良い実績なのを改めて認識しました。
退職金は?
まず、退職金ですが、「基本金」と「加算金」を合わせたものが養老金として番付の地位や勤めた場所数によって決まります。
日馬富士の場合は横綱という地位ですから
1500万(基本金)+(50万×77場所)=5350万
になります。但し減額されなければの場合です。
また、懸賞金の協会積立金があり、これも引退後にもらえるようになっています。取り組み終了後に勝った力士が袋の束をもらっていますが、この束が懸賞金で1袋手取りが3万円だそうです。
その中から相撲協会がお金を積み立てしており引退後に支給されています。
それらを合わせると、日馬富士は2億円程度になるのではないかと言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
日馬富士は自ら引退を表明し、退職金を手にすることになります。前回の元横綱の朝青龍の時も多くの退職金が支給され、かなり批判されました。今回も日馬富士が暴行事件を起こしたことには変わりはありません。大相撲の世界は、いろいろな意味で特別な世界のようですね。
どこまで悪しき慣習が少しでも是正されるのでしょうか?まだまだ相撲界の闇は深そうです。